【鎌倉】「死にたくなったらふる本やにおいで、生きてなよあんた」の看板について- 「游古洞」


長い時間を経てもなお現在にその姿を留めているものが好きです。
例えばこの鎌倉という「街」もそうですし、植物や寺社仏閣、お墓もそうかな。

そうしたものを目で見たり手で触れたり鼻でかいだりすることで頭の中で私は時間旅行をしているような心地になるんです。そうなると私はひたすらぼうーっとしてしまう。我ここにあらずの姿を街中でよくさらしてしまうのです。というか危ないなぁこれ、冷静に考えると・・。

少し話が飛びますが私は小林秀雄が大好きで、彼が眠る東慶寺のお墓の前でよくぼうっとすることがあります。その墓前に長時間居ると、いろんな観光客の方にも声をかけられます。

「そこのお若い方、小林秀雄さんのご親族のかたですか?」
「すみません、小林秀雄のお墓はどこでしょうか?」
「あなた、小林秀雄さんのファンなの?」

対する私。

「私ですか?いえいえいえ!親族じゃありません」
「お墓ですか?こちらですよ、ほら。(宝塚風に身をひるがえす)」
「はい、私、小林秀雄の大ファンです!」

なんて感じのこのやり取り、おそらく5回くらいしたと思います。

・・話を戻します。

游古洞(ゆうこどう)は静かにたたずむ

長い時間を経ているもの、もちろん古本だってそうですね。そんな古本を扱っている鎌倉駅の近くの「游古洞」もそんな時間旅行をしがちな場所の一つです。
※古本屋さんというか、骨董屋さんにカテゴライズされるのでしょうか。

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店外には年代物の古書が立ち並びその他絵画や壺などの芸術品が置かれています。
店内はいわずもがな。外に並べられた品々を見て、この前見たときと変化はあるかなと游古洞の前を通る時にはよく足を止めて確認をしてしまうのです。

ところで先日、Twitterに游古洞のお店の壁に貼られている絵をアップさせていただきました。

可愛らしい猫の絵と共に書かれた、柔らかくもインパクトのある文章が目を引きます。

「死にたくなったらふる本やにおいで、生きてなよあんた」

こちらの絵は「大野隆司」さんという版画家による作品だそうです。
絵は不思議ですよね、大学生のころは正直絵画には見向きもしなかったのですが社会人になってからは絵をじっくり眺めるようになりました。すなわち、この作者はどんな思いで、どんな意図をもって、見る人にメッセージを発信しているのかなと考えながら。

そう、まるで文学作品を楽しんでいるときと同じように・・! そんな楽しみ方を持っていたからこそ、ある意味この大野さんの絵に注目することが出来たんだと思っています。

それにしても大野さんの絵は優しいです。力が抜けていて、それでいて大野さん自身の力強いメッセージを私は私なりに感じました。そして、この游古洞での大野さんの絵との出会いの後、何点か大野さんの絵が欲しくなって来たりしています。

私が欲しいのはこちらの「自分を持つ」です。

img(引用元)2009.ART GALLERY MUSE

版画特有の性質なんでしょうか、黒色と白色部分の境目がすごくはっきりとメリハリがついていて、冬の寒い日の夜風にあおられている(であろう)マフラーを見ると思わず凍えるような気になります。でも、胸に抱かれた時計(これは未来を暗示?)と猫の周りに浮かぶ12個の小さな星に前向きなメッセージを感じたのです。深読みをしてみると、冬は空気が澄んでいてとても景色がクリアに見えます。寒くて辛い状況の中にはマイナスな事ばかりではなく、星が綺麗に見えたりだとか、プラスなことだってある。逆境の中に見るプラスの何か、が見えたりするのかもしれないですね。

さてさて、「じぶんをもつ」というシンプルなメッセージにそもそも心を打たれたのですが、
こうやってじっくりと現物ではないwebの画像を見るだけでも上記のような感想を抱いたのです。実際に原画をみたならばもっともっと感じる事も増えてくるんでしょう。
検討の上、購入を決めた際はまたご報告させていただきますね。

大野さんとの出会いの場となった游古洞。
今度はじっくりお店の中を見て回ろうと思います。

游古洞(ゆうこどう)
・公式サイト:http://www.yukodo.com/
・所在地:神奈川県鎌倉市御成町13-30

電話: 0467-23-1967
・OPEN:10:30-18:00

 

 

 

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