【書評】10年という月日を色々な角度で考える。「十年交差点」を読んでみた。


内容紹介
その一瞬の選択が、あなたの10年後を変える。「10年」。
それだけをテーマに五人の人気作家が自由に物語をつむいだら、泣けて、震えて、心が躍る、こんなに贅沢な短編集ができました!
時間を跳び超える機械を手に入れた男の、数奇な運命を描く物語。戦慄の結末に背筋が凍るミステリー。そして、河童と猿の大合戦に超興奮の時代ファンタジー、などなど全五作。
それぞれの個性がカラフルにきらめく、読みごたえ満点のアンソロジー。

 

普通に就職して普通に仕事をして何年も経つと先輩だけじゃなく後輩も出来る。
後輩が出来るとあの頃の私はどうしてたかなと思う場面によく出くわす。

もしもあの時こうしていたら、あの日違う事をしていたら。

誰もが考えるif論、たられば論、そんな事考えたって意味ないよって言う人もいるけど
私はやめられない。仕事を終えてふらりと立ち寄った横浜駅の本屋さんで見かけた
「十年交差点」はそんな今の私にぴったりの本だった。

「十年交差点」は「10年」をキーワードに5人の作家が書き上げた短編をまとめた本。
10年はあなたにとって短いですか?それとも長いですか?

そういえば私の大好きな漫画、「青い花」(志村貴子)にこんなセリフがある。

その一言は十年月日をかるくとびこえた。
(青い花1巻 P44)

私にとって10年はとても短く、とても長い。おかしな表現かもしれないけど私はそうだ。
何かのきっかけ次第で10年は短くも長くも感じる。青い花を読んだ時このセリフに出会って
思わずぐっと来たのを覚えている。

・・・・・

例えば10年前、私は何をしていたのだろう。
例えば10年後、私は何をしているのだろう。
過去はひとつひとつの私たちの選択の結果だとして、
未来はひとつひとつの私たちの選択の行方だとして・・

そういう事を考えてしまうと自然と何気ない普段の行動(選択)がプレッシャーで
物凄く重いものに感じる。当然だけどこんな事を考えるまではそもそも普段の行動なんて
気にもしなかったしそれが「普通」。
そんな普通の連続が少し違って見えるような気がした、読後感だった。

少しだけ、少しだけでいいからこの短編集を手に取って自分のこれまでの人生とを
思い出しながら読んでほしい。5つの短編はそんなあなたを待っているはず。

「しあわせか?」「何を不安に思って暮らしている?」
「大丈夫だ、気にするな」「そんな事で人生はだめにならない」
幸せを探してタイムトラベルをする一人の男がいつしか本当の自分を見つける様を描く
地球にはりつけにされた男(中田永一)。

十年後の自分という課題作文を白紙で提出をしてよこした女子中学生。
「大塚先生は10年後何をしてるの?」と逆に質問をする彼女に対して大塚は。
中学教師という立場を踏まえつつ一人の生徒の人生に大きな影響を与える事になる
教師の苦悩を綴る白紙(白河三兎)

子を宿すことが難しいとされる性染色体異常、ターナー症候群。大学生のある日、自分が
ターナー症候群である事を知り戸惑う北川巴瑠。10年が過ぎプロポーズを受けた彼女は
相手に対してどう返事をするのか。
優しい気持ち、そして勇気をもらえるお話しひとつ、ふたつ(岡崎琢磨)

大切な人と急に会えなくなった結実子。
その人はどこかに居る。居るけれども会えない。
ぽっかり空いた大きな穴、苦しみの10年。
そんな結実子に待っていたものは。君が忘れたとしても(原田ひ香)

中国で餓えに苦しみ、大勢の身内を引き連れて倭国(日本)に移住する九千坊河童。
千欠け(万から千を引いて九千)と呼ばれていた事を思いだす度、自分に足りないものはと
落ち着かない河童。巻末は異色(?)のファンタジー、一つたりない(畠中恵)

 

あなたにとって素敵な出会いがあると自信をもっておすすめする「十年交差点」。
ぜひ、ご一読を。

 

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