【読み切り】顔


高校に入学したあたりにニキビができ始めた。
頬に小さくぷくりとニキビが五つ。
僕はニキビが嫌で嫌で仕方がなかった。

道行く人がみんな、僕を見ているような気がする。
僕の顔のニキビをみて笑っているような気がする。
僕は僕が嫌で仕方がなかった。

僕は写真が嫌いになった。僕という物体を出来るだけ記録に残したくなかった。
そのうち、家族に顔を見られるのも嫌になってきて食事も自分の部屋で
一人で食べることが多くなった。

そうすると、だんだん他人が怖くなってくるのだ。
家族も所詮は他人。ましてや家の外にいる人たちは。

好きな人も出来た。だけど何もできなかった。
何故ならニキビが恥ずかしいから。

それくらいの事でという人もいたが僕にとっては大問題だった。
世界で起きているテロ事件や、大災害のニュースよりも
僕にとってはニキビが何よりも解決しないといけない事だったから。

毎日毎日鏡を見る。嫌いな僕を見るために。
毎日毎日野菜を食べる。嫌いな僕を変えるために。
毎日毎日、毎日毎日、ニキビは、なくならない。

受験勉強を本格にし始めたある日、ニキビが急に落ち着き始めた。
だけど僕はニキビよりも受験の事で頭がいっぱいだったからあまり気にも留めなかった。

第一志望の大学に合格したころになるといつの間にかニキビはすっかりなくなっていた。
だけれど僕はいまでも僕が嫌いだ。

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