【連載】ネナベの田辺さん(2)


「えっと、それで、たべさん?」
洗練されたOLというかなんていうか、そう、丸の内あたりで働いていそうな
綺麗な女性はそう言いながら私を見た。
私はとにかく頷く、そしてそのまま俯く。ひたすら俯く。
足元に何か奇跡が落ちているかと言うように。
もちろん奇跡のひとつもおちてない。落ちているのはとっても新鮮な罪悪感。

女性は一呼吸おいてからさらに呟く。

「・・・そっか、たべさん女の子だったんだ・・」
そう、目の前にいる人こそにゃごろうさんだ。DMで早々にネナベをカミングアウトしたにゃごろうさんだ。
というかにゃごろうさんもネナベをしていた時点で私と同罪だ。
だからといって私は強気に出ることはできない。
何故かって?答えは簡単ヘタレだから。
私は俯く。私は俯く。

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にゃごろうさんに連れられて新宿西口にある喫茶店に入る。
客層は忙しい素振りを見せるサラリーマンが9割、ネナベが1割。

「ここね、よく来るんだ」
にゃごろうさんがアイスコーヒーを手につぶやく。
「ビジネスマンだらけでなんだか落ち着かないでしょ?でもね、私は
逆にそういう環境の方が落ち着くの」
私の大学は護国寺近くの女子大で新宿に比べるとかなり落ち着いた場所にある。
なのでこうした雰囲気には慣れていない。
なのでにゃごろうさんの意見には同感できない。

「で、たべさん?そろそろしゃべってくれない?私は別に怒ってたりしないんだから」
「あっ、いやえっと、その、ごめんなさい、男だって嘘ついてて・・」
「それを言うと私もごめんね、ネナベしてたのは私だって同じだもん」
「えっと・・、にゃ、にゃごろうさんはどうしてネナベをしてたんですか?」
「何でだろう、男を演じてみたかったっていうのかな。ほら、ふだんとは違う
自分を演じてみたくなる時ってあるじゃない?」
私は頷く。
「男はいい意味で何でも言いたいことが言えるっていうか。例えばねぇ、下ネタとか」
私は頷く、ひたすら頷く。

ネナベを始めた動機は私とほぼ同じだった。共通点が見つかると打ち解けるのも時間はかからなかった。
共感メイクスミーハッピー。にゃごろうさんと話しているとネナベだけではなくどんどん共通点が見つかった。

その一つ、私と同じ大学の出身だったという事。つまりは私の先輩だ。
その一つ、私と同じ高校の出身だったという事。つまりは私の先輩だ。
その一つ、私と同じちゅ・・
・・・

「え!!!ちゅ、中学、小学校まで同じなんですか!?」
「そ、そうみたいだね、私もびっくり。たべさんと私、どこかですれちがってんじゃない?
私は社会人1年目の24歳だから、小学校のときあたりに」
「私は20歳なので、そうですね、小学校の時に」
「す・・すごいね・・」
「すごすぎです・・」

数学が得意な人がいたら教えてほしい。Twitterという広大な宇宙のなかでネナベをするという行為で
繋がった二人が小学校から大学まで同じだというこの奇跡、確率的にどれくらいなのかを。

お互いの目を見つめあうネナベ二人組。
奇跡の新宿西口、午後三時。

(続)

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