【鎌倉】頼朝の墓の守り人との出会い


「私たちがね、ボランティアで説明をしたり管理して回っているんですよ」
そう話す初老の男性とある日私は出会いました、何処でかというと、頼朝の墓の前で。

それはあまりにとつぜんに

この日はちょうど依頼を受けているお仕事の下調べを兼ねて鎌倉市の雪ノ下付近を
散策して歩いていた訳ですが、ふとなんとなく近くにある頼朝の墓に行ってみたのです。

ほんとうに、なんとなく。

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頼朝の墓は清泉小学校の北側にあります。
鶴岡八幡宮のように決して賑やかで煌びやかな雰囲気はありません。
ただただ静かに、静かに。ひっそりたたずんでいます。

一歩一歩、階段を上る事1分くらい。

img_0763頼朝の墓に到着。
幕府を立ち上げた英雄の墓にしては想像しているものよりシンプルで質素かもしれない
ですが、武士の墓はかくあるべきと私は考えていたり。

「・・・で、頼朝はこの下にある場所に館を構えたわけであります」

墓前にしゃがみこんで手を合わせていると聞こえてくる声。
どうやら近くで頼朝について説明している男性がいるようだ。
ああ、ツアーの案内人の方かな?
そう思って聞き耳を立てているとやがて説明を受けている方たちは「それじゃあ・・」と
言い残し墓を後にした。

え、ツアーの案内人の方じゃないの?

お墓参りを終えるとまもなく、私はその男性と目が合った。

「おや?ここは初めてですか?」

そう話す男性、年のころは初老くらいだろうか。笑顔で私にそう話しかけてくださった。

「ああ、いえ!何度も来たことがあります」
「ほほう、そうですか。あなたは鎌倉の方ですか?」
「はい、そうです。あの、わたし先ほどのご説明をお聞きしてたんですけど、
ツアーの案内人の方かと思いました。お上手だったので」

そういうと男性は笑顔ですかさずこう返す。

「ああ、いえいえ。私はボランティアのようなものです」
「・・ボランティア?」
「ええ」

男性は続ける。

「私たちがね、ボランティアで説明をしたり管理して回っているんですよ」
「そうだったんですか!?そうとは知らず・・すみません」

何故か謝ってしまうタイプの私。

「いえいえ、あなたはどうしてここに?」
「あ、歴史に興味があったりするのと、少し調べ物をしていてふらりと来たんです」
「おお、お若いのに珍しい。うれしいかぎりです」

男性は頼朝のお墓に手をかざして話を続ける。

「以前ね、このお墓はよくいたずらにあっていたんです」
「ああ、知ってます。酷い事をする人間がいるものですよね」

この数年、頼朝のお墓に心無い人間がいたずらをする事案が何件か発生している。
ボランティアの方たちは何とかそういった事を事前に防ぐべく自発的に
見回り、管理を行っているというのだ。

また、この方達は鎌倉市に対し頼朝の墓の管理の仕組みを整えるべきだと訴えてはいるもののそれに対する回答もあやふやなものらしい。
つまるところ結局、自治体はお墓の管理にはあまり積極的というのではないようだ。
(あくまでもこの方のお話によればなので悪しからず)

「頼朝は幕府の祖、この墓は最も大切にされるべき場所の一つなんです。・・ただね」
「・・・ただ?」
「いやぁ、まあ政治的な絡みで色々とあるんですよ。ははは」

政治的な。
・・あ、この部分は割愛します。お察しください。

「ともあれ、この場所は大切にしたいんですよ。一住人としてね」
「あの、わかります。そういう気持ち」
「そうですか!」

テンションの上がる男性、びっくりする私。

「もしよかったら私がこの周辺の案内もついでにさせて頂きたいと思うんだがどうですか?」

わあうれしいぞ!
嘘じゃなくて本心で。
こういうお話は遠慮なくお聞きしたいのです。

「ぜひ!お願いします!」
「それじゃあ早速階段を降りましょう。さあさあ、こちらへ」

 

 

その後白旗神社、頼朝の構えていた館のお話し、鶴岡八幡宮と鎌倉宮との関係など
webでは載っていない迫力のある話を男性から聞くことができた。

「・・今私がしている内容を例えばあなたのような方が覚えて、私の代わりに
誰かに説明してくれたりしたらうれしいなって常々思っているんです」
「いえいえそんな!・・・荷が重いです」
「いえ、あなたならできるとおもいます、ええ」

褒められなれていない私は照れくさくてたまらなかった。
あ、いやじゃないです。もっとほめてください。

そしてお別れの時。

「それにしても面白かった。また会う事があったら鎌倉駅前にオススメのお店があります。
お酒でも飲みながらじっくり私たちの話を聞いてほしいものです」
「ああ!それいいですね!今度お会いしたら、ぜひ!」
「ええ、ぜひ!」

手を振りながら別れた私達。

かの初老の男性は差し詰め頼朝のお墓の守り人さんとでも言いましょうか。
こういう方が一人でもいる街は今後も永く永く続いていくのだと思います。

歴史を学ぶという事は過去を追体験して分析し、結果を自分の血として肉とする事。
また一方で、人の思いをずっと受けついでいくという心も養う事。

男性との出会いはそんな事を思わずには居られない出来事なのでした。

(終)

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