【連載】ネナベの田辺さん 第10話


twitter自体は高校の時から始めたけど、いわゆる腐男子アカウント「たべ」を始めたのは
まだ一年未満。ちなみに高校の時から始めたのはいわゆるリアル中心のアカウント。

リアル中心のアカウントの私、「田辺すみれ」はリアルの私そのもの。
どのあたりがリアルそのものか。例えば本音をつぶやかない所とか。
とにかくトラブルが怖い。なので自分からトラブルの火種はまかないように気を付けている。だから物凄くつぶやきが無難。「今日は暑いね」とか。どう?面白くないよね。
そりゃそうだよ、だって私も面白くないもん。ホントに。
本音でつぶやかないアカウントを続けていると、ただでさえフラストレーションのたまる
リアル環境を二つ持っているようなものなので正直イライラした。
かといって本音でつぶやく勇気もない。私は「田辺すみれ」として発信する勇気がなかった。なんだかおかしな表現だけどね。

「たべ」としての私はリアルとは全く関係のない人たちと交流をしている。
とにかく私の好きな事だけをつぶやく。私自身が本音全開で楽しくしているおかげか、
私のつぶやきで笑ってくれる人がいる。それがうれしい。
こんな事を言うとなんだかさみしい人って思われるかもだけど別に構わない。
それどころか私は私の大切な居場所を作ったんだっていう達成感も味わう事が出来たと
胸を張っていえる。あ、リアルじゃ言わないよ?あくまでも表現の一環。

そんな私「たべ」はとにかくリアルを特定をされないように気を付けている。
私の住んでいる場所の話はまずしない。私の学校の話題も出さないし、
そもそも大学生だと気づかれないように勉強自体の話も一切しない。
あとは変に女だと見られたくないように、男が好きそうなものも貪欲に吸収していった。
例えば野球がどうとかプレミアリーグがどうとか。
あ、「何々がかわいい!」なんてセリフもしない、口調も若干荒くしている。
でもそれでいて「BLっていいなあ、おい!」みたいな事もつぶやいちゃう。
「たべ」は徐々に徐々にイカれた腐男子としてフォロワーの人たちに認知されていった。

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「たべ」がそうして私自身の生活に浸透していくうちに、「たべ」と「田辺すみれ」の
どっちが本当の私なのか時々分からなくなることもある。
「田辺すみれ」は「たべ」である。うん、これは間違っていない。
「たべ」は「田辺すみれ」である。・・・あれ、間違っていないけど何だか違和感。

私、「田辺すみれ」は「田辺すみれ」が好きじゃない。でも「たべ」は好き。
すると私の中の「たべ」は「田辺すみれ」と一緒にされたくないって思っている・・?
だから起きた違和感なのかな。何だか自分でもよく分からなくなってきた。
とにかく私は「たべ」である私が好き。例えリアル(田辺すみれ)が否定されても「たべ」が
あるって思うとどうってことないのだ。

でももし、「たべ」自体を私が嫌いになったら、私はどうなっちゃうんだろうっていう
漠然とした不安も感じ始めている。たかがtwitterで何を考えているんだって話だけど。
他の人はどうなのだろう。リアルである自分が大好きで、例えばtwitterあたりのSNS上でも
大好きなリアルの自分として登録をして楽しむことが出来ているのだろうか。
少しも演じたりしないで?

すごいな、私には到底できそうにない。

いいなあ。

嘘で塗り固めた「たべ」にすがる私。
「たべ」の事を深く考えないようにしている私。
「たべ」として築いた居場所を大事にする私。
嘘が嘘であるために演じ続ける私。

私、田辺すみれは、心底汚い女だ。

(続)

 

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