自分と向き合ってやがて「編集者」となる。「こちら文学少女になります」を読みました。


内容(「BOOK」データベースより)
入社一年目、ザ・文学少女山田友梨が配属されたのはなんと、青年漫画誌「ヤングビート」。大物作家を激怒させ、長寿連載「解決屋一平」はまさかの終了。童貞が主人公のエッチ漫画「いまだ、できず」の人気は急降下。雑誌を牽引する大ヒット作「キヨのひらく箱」には激しく心を動かされるが、作者とは一回も会えない。イタくて深い、新感覚!青春感動物語。25歳の新鋭が放つノンストップストーリー。

私がやりたいのはこんな仕事じゃない。
私の職場がこんな場所だとは思わなかった。

なんて事、きっとほとんどの人が就職してから感じる事。もちろん私もその例に漏れない。
だけど仕事を通じて面白いことがある。それは、私が感じた事のない「楽しい」にふと出会う瞬間があるという事。ちなみに私の場合、その「楽しい」と思えることとは「何かを書く」という事で、さらに誰かに一言「楽しかったよ」と言ってもらえたら私は「生きててよかった」と冗談抜きで思っちゃうのだ。大げさだけど。
だから趣味でもっともっと小説を書きたいと思うし、こうやってブログを書きたいと
思い立った。

主人公の山田さんは漫画が嫌いで小説ばっかり読んでいたという根っからの「文学少女」。
なのに就職先の出版社では青年漫画の部署に配属されてしまった山田さん。
この物語は山田さんの担当する大御所漫画家からクレーム電話が入り怒り狂う部長に山田さんが呼ばれる場面から始まる。

とにもかくにも漫画に疎い彼女。大御所だろうがお構いなし。
思ったことをそのまま口にしてしまいてんやわんやのシーンは読んでいてつい笑ってしまう。というか山田さん、強いなと。私なら無理。

青年漫画誌の現場は色々と女子からみると凄まじい環境のようで、とにかくエロい言葉が
お構いなしに飛び交う。セクハラ?なにそれみたいな感じ。脚色してる部分もあるんじゃないかなと思うかもしれないが本作についている帯には「ほぼこのとおりであります」とヤングジャンプの元編集長がメッセージを残しているからまあ信憑性はあるんだろう。スカジャンを着てドスのきいた声で攻め立ててくる上司や、胸の大きさがどうとかいうセクハラ社員、周りにいると思うと頭がクラクラしそうな現場だけどそんな濃いメンツにも共通点がある。
みんなが信念を持った、「編集」であるという事。

山田さんはやりたくもない漫画編集者としての道をそんな人たちに囲まれて一歩ずつ成長していく。そして彼女は思わず担当することになった看板漫画をきっかけに彼女は自分自信を見つめなおす事となる。

下ネタが飛び交う本作、読む人を選んじゃうかもしれないけどそれを理由に読まないのは極めて勿体ない。主人公と周囲とのコミカルなやり取りはとても面白く電車の中で読んじゃいけないほど。でも本作の一番の魅力はきっと、主人公が本当の自分を、見たくない自分を仕事を通して向き合っていくという過程なのだ。私自身、彼女に自分を重ねていくうちに私の中のいわゆる忘れたい過去を思い出してしまって正直苦しくなったりもした。でもそれはきっと、ちゃんと苦しむべきこと。そうやって自分と向き合うのは決して間違いじゃない。なんて事を思っちゃうと思わず涙ぐんでしまう。コミカルなお話なのに泣いちゃうだなんて、不思議な気分。この不思議な気分は何ていえばいいんだろう、感動?ううん、そんなものじゃない。
今のところうまく表現できない自分が腹立たしいけど、読後感のこのさわやかな気持ちが
そんな事どうでもいいやって気分にしてくれる。

自分を見つめて、少しずつ成長して、「漫画編集者」としての楽しみを見出すお話し。

こちら、文学少女になります。

※追記※
こちらの書評、公式の特設サイトに取り上げていただきました。
http://www.boiledeggs.com/kochibunad2.html

 

 

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