【読み切り】恥ずかしがり屋のご近所さん


「おはようございます!」

同じマンションに住むご近所さんに挨拶をすると彼はいつも照れくさそうにする。
私は基本的に恥ずかしがらずに人に話しかけたりするタイプだけどおそらくそのご近所さんは
そうじゃないようだ。

いつも元気に挨拶をしても彼はいつもきまって伏し目がち。
これは私が嫌われているからだろうか、いや特に恨みをかうようなこともしていない。
だってこのマンションに引っ越してまだ間もないし、彼と特段関わりもないから。
もしかすると私の挨拶のテンションがおかしいのかもしれない。
そこで私は学習をした。

先日、またその恥ずかしがり屋さんとばったりマンションの玄関付近で鉢合わせた。

「こ、こんにちはー」

今回は少しだけトーンをおさえて挨拶をしてみた。すると彼は小声でこんにちはと返してくれた。

今まで聞こえなかった返事がついに帰ってきた。これは大きな一歩だ!
その後、私は彼と会うたび落ち着いたトーンで挨拶をすることにした。

そうだ、人にはそれぞれペースがある。
彼の場合はこう、テンションが高い人が苦手なんだろう。当初の私は間違っていたんだ。
そう考えると少し迷惑なことをしたのかもしれないと反省する私、毎日が勉強だ。

・・・・

仕事が長引いて帰るのが遅くなったある日、ひどく疲れた身体でエレベータを待っていた。
今日は忙しかった。この後少しやらないといけない仕事がある。ああ、しんどい。
そう下を向きながら考え事をしているとエレベーターの扉が開いた。
顔を上げると誰かが乗っていた。彼だった。

びっくりしてしまった私はエレベーターのドアが開いた瞬間にやや大きめな声で
「こ、こんばんは!」
と言ってしまった。

スマホに目を遣っていた恥ずかしがり屋さんはびっくりして
「ひゃ!こここんばんは!!!」
と返事をしてくれた。ガッチリした体格からは予想もつかないような高い声で。

彼は顔を真っ赤にしてすぐさまどこかに立ち去った。
彼は決して悪くない、私も決して悪くない。
悪いのは、誰だ。

・・私?

 

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