【連載】ネガティブ村井さん(3)


私が勤める会社は始業が午前9時、就業が午後5時だ。かといって終業のベルが鳴っても
皆は退社することは無い。
始業時間は守っても就業時間は守らない、不思議な人間の集まりだ。

私は大体始業の30分前に出社している。なぜか、早く帰るためだ。
一日PCを寝かせておくと私宛への依頼のメールがわんさかたまるから
少しでも早く依頼を片付けたいのだ。

今日も今日とて8時30分に出社アンドPC起動。手慣れたものだ。
真っ先にメールボックスを確認するのもルーティン。

「うわ・・・」

今日の依頼の数は尋常じゃない。これ、私一人で捌けって事?
私って信頼されてるのかな、えへへ、嬉し涙で前が見えない。死にたい!

顔を上げて深呼吸する。
山積みの仕事に体が拒絶反応を起こすからだ。
大きく息を吸って、吐く。大きくオフィスの空気を吸って、吐く。
ああ、素晴らしくも腐ったにおい。万歳。

それにしてもこれだけのメールが来てたら一通くらい
ねぎらいのメールがあってもいいよねって思う。

・・・

無い。あと、ざっと見たところクレームっぽいメールが1通あった。
目を細めながらメールを開ける。井内からだった。

内容としては昨晩の資料、一部誤字があったから気を付けろというものだった。
あと井内はメールの語尾にこれまで私が犯したミスの一覧表というものを付けている。
その素敵な一覧表に今回の誤字事件も加わるわけだ。ハッピー。

はあ、井内の頭上の電灯が落っこちて井内の脳天に直撃してくれないかな。
井内に対するお詫びメールをうちながら思う。

午後3時、オフィスも少し中だるみするこの時間帯。
私は一心不乱に依頼事項をつぶしていく。
でも依頼事項は減らない、どうしてだろう。
あ、そっか、リアルタイムで追加案件が発生しているからだ。

PC画面の右下にチカチカとメール通知が点滅する。
それはまるでオフィス版光化学スモッグ。
へへっ、光化学スモッグで明日が見えないぜ。

午後4時、井内から内線電話が入る。
色々と何か喚いていたけど結局用事があって電話をしたわけじゃなかったようだ。

・・・こいつ、私の事が好きなのか?
想像すると鳥肌が立ってきた。死にたい。

午後5時、私はやるべきことをやったので帰る。逃げる。素晴らしき大脱走。

(続)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です